経団連が策定していた倫理憲章とは?就活ルールに関わらず企業が行うべき取り組み

新卒を対象とした採用活動は、学生の学業の妨げにならないよう取り決めがありましたが、日本経済連合会(以降、経団連)が2021年卒以降の学生に対する就活ルール策定を廃止すること明言しました。

以降は政府主導で就活ルールが策定されることなり、2021年度卒以降の新卒採用活動の動きが注目されます。

この記事では経団連が策定していた就活ルールの歴史を振り返りながら今後の就活ルールについて、そしてそのルールに関わらず企業が行うべき取り組みは何かを紹介します。

倫理憲章とは

倫理憲章とは、経団連が策定した大学、大学院などの新卒・修了予定者の採用活動解禁日などを示す自主ルールのことであり、正式名称を「採用選考に関する企業の倫理憲章」と言います。

就職活動に関するルールの変遷について

・倫理憲章を制定する前は就職協定だった

・経団連が策定する倫理憲章へ移行

・2016年卒からは「採用選考に関する指針」に名称変更

・形骸化により2020年卒をもって廃止

と順を追って見ていきます。

倫理憲章を制定する前は就職協定だった

倫理憲章が制定される前に作られたのは就職協定がありました。就職協定が作られる以前は財閥系企業が中心となり、文部省に対して大卒学生の採用選考時期は「卒業後」に行うこととされていました。

しかし、卒業前の選考をする企業も目立ち始めました。そして早期選考の動きは止まることがなく、1935年に卒業後選考の協定は破棄されました。

その後、採用選考は各企業に任されていましたが、採用選考の更なる早期化の動きは止まることはありませんでした。

採用選考の早期化による「学業の妨げ」を懸念した文部科学省は、1953年に教育・財界関係者を集めて懇親会を開き「採用選考の推薦開始を卒業年度の10月1日以降とする」と決定しました。この取り決めが「就職協定」になります。

高度経済成長期に伴い就職の「売り手市場」が加速していきます。企業側も早いうちにより優秀な学生を確保したいという考えから更に採用選考の早期化が加速しました。

その結果、最終学年前に内定が出てしまう青田買いが問題になりました。採用選考の早期化による学業の阻害が懸念され就職協定も何度か改定されましたが、早期化に歯止めがかかることはなく、経団連は1997年卒採用を最後に就職協定の廃止を決定しました。

就職協定の廃止後、経団連が中心となり「倫理憲章」を策定し正式な内定日は卒業/修了学年の10月1日以降とすると定めました。

2016年卒からは「採用選考に関する指針」に名称変更

2013年、政府から「学生が勉学に集中できる期間を長く確保するために就職活動の時期を繰り下げるように」と要請があり、経団連は「採用選考に関する指針」を発表。2016年卒の新卒採用からの広報・選考活動時期が変更されました。

また、同時に企業の就職・採用活動のルールを定めた倫理憲章の名称を2016年度卒の新卒採用から「採用選考に関する指針」に変更しました。

形骸化により2020年卒をもって廃止

2021年の春以降入社組の学生の採用活動において、経団連の中西宏明会長から「就活ルールを廃止する意向である」ことが発表されました。

現在の就活ルールは企業説明会等の広報活動の解禁日は「大学3年次の3月1日以降」、内定などの選考活動解禁日は「大学4年次の6月1日以降」となっています。

しかし、

・就活ルールを破った際の罰則が存在しない

・経団連に加盟していない企業には適用されない

という理由から就活ルールは形骸化しています。

また経団連に加盟していない企業は有利な状態で採用活動を行うことができるので、経団連に加盟している企業の中でも早くから採用活動を始めながら表向きの広報活動や選考活動の日のみ就活ルールに従っているところもあります。

そして新卒学生の採用が難しくなりつつある中、留学経験者や既卒者など多様な人材を採用することができる通年採用を行う企業も増えています。通年採用は年間を通じて採用活動を行うため就活ルールが適用されません。これも形骸化の理由の一つとなっています。

現在は政府主導で就活ルールを策定

経団連から2021年の春以降入社組の学生の採用活動について就活ルールを廃止する意向が出された後、学生・大学・企業などから懸念が寄せられました。

そこで経団連に代わって政府が新たなルール作りを主導することになりました。2021年以降卒業する学生の採用活動にはどのような就活ルールが適用されるのでしょうか。

2024年卒まで、就活ルールは現状維持

経団連の発表を受けて政府は2018年10月に関係各省庁と会議を実施。

その会議において2021年度卒業予定の学生について就活ルールは「現行のルールを維持する」方針が大多数でした。

学生が学修時間を確保しながら安心して就職活動に取り組めるようにするためには急激なルール変更は適切ではないと判断しました。

また就職・採用活動日程について何らかのルールを必要としている企業も多くあり、現行のルールを維持することになりました。

その後、毎年会議が実施され2020年10月の段階で、2023年卒の就活生に対して現行のルールを維持することが決定されました。また2024年卒の就活生に関しても現行のルールが適用される予定です。

博士は就活ルールの対象外

博士課程の学生の場合、学部卒や修士と異なり就活時期の取り決めとなる就活ルールがありません。

そのため優秀な人材を確保するため積極的に早期選考を開始する企業も多くあり、普通の就職活動よりもインターンや選考が早く始まります。特に博士採用を積極的に行っている企業ではその傾向が顕著です。

就活ルールに左右されずに企業が行うべき取り組み

経団連に代わって政府主導で策定されるようになった就活ルール。

このルールは毎年協議されることになっており、今後何らかの変更があるかもしれません。しかし採用担当者がやることは基本的には変わりません。

採用担当者がやるべきことを、

・自社で活躍できる人物像を明確にする

・情報収集を徹底する

・採用活動の準備を万全にする

というポイントから紹介します。

自社で活躍できる人物像を明確にする

自社で活躍できる人物を採用するためにはまず「自社の求める人物像を明確化」することが重要です。

この人物像が明確に決まっていないと、採用のミスマッチが生じるリスクが高まり、採用活動がうまくいきません。

自社の求める人材を明確化するためには具体的に、

・会社の事業計画

・現在の組織体制

・今後必要になる人材、組織編成

・必要な人材はどのような能力や考えを持った人が良いのか

などの項目を基準に考えてみると良いでしょう。

また、採用担当者が一人で考えるのではなく、経営陣やその人材を必要としている部署等にどのような人材に来てもらいたいのかをヒアリングし、自社が欲しい人物像を設定することが大切です。

情報収集を徹底する

就活ルールが急激に変化する可能性は低いものの毎年同じ採用計画で通用するわけではありません。

新卒採用市場は常に変化しているので、就活ルールの動向だけに注目するのではなく、大手企業や競合他社、学生の動向に関する情報を集めることも重要となります。

大手企業や有名企業が発信している、広報・選考活動は時期や手法なども参考になります。

参考になる部分は自社の採用活動に取り入れてみましょう。

また、広報・選考活動の日程が被っていないかも確認しておきましょう。

日程が被ってしまうと学生が分散してしまうので採用したい人材を逃してしまう可能性もあります。

採用ターゲットとなる学生の就活動向や大学の行事予定などを確認し、広報・採用活動のスケジュールを決めることも大切です。

採用活動の準備を万全にする

採用活動で重要なことは、準備がしっかりできているかどうかです。まず始めに採用計画を明確にすることが大切です。

具体的には、

・いつまでに

・どの職種でどんな人材を

・何名採用したいのか

といったことを決めると良いでしょう。

採用計画が決まったら採用する人物像を決定します。

この時、採用に関わる全ての部署の人たちと採用する人物像の認識を共有することが重要です。人物像が決まれば、自社内で採用活動に協力してもらえるように協力体制を整備します。

また、就職サイトの利用については前年度の効果実績を踏まえて予算内でプランを検討します。そしてこれらをもと採用活動のスケジュールを決めます。いつまでに内定を出すのかを決め、計画に無理がないか確認しましょう。

まとめ

自社の採用活動のスケジュールなどを決めるために重要となってくる就活ルール。

本記事では経団連が策定していた倫理憲章とは何かから始まり、経団連主導により策定されていた就活のルールの廃止から政府主導のルール策定に変わるまでの歴史を順を追って説明してきました。

今後しばらく就活ルールは現状維持していく見込みです。しかし就活ルールに多少の変更があったとしても企業が新卒採用活動でやるべきことに大きく変わりはありません。

今回は就活ルールに左右されずに企業が行うべき取り組みとして、

  • 自社で活躍できる人物像を明確にする
  • 情報収集を徹底する
  • 採用活動の準備を万全にする

について紹介してきました。

自社の採用活動をスムーズに行うために本記事役立てて下さい。