リファラル採用の報酬(インセンティブ)相場は?設定方法や注意点を解説

「リファラル採用」とは、社員からの紹介を経由して採用する制度のことです。

社内のメンバーやや元社員などから、求める条件にマッチする方を推薦してもらうことで、自社とスキルやカルチャーのマッチ度合いが高い方を採用しやすい利点があります。

採用が決まった場合は、紹介してくれた方に報酬(インセンティブ)を出すのが一般的ですが、その価格相場は気になるところです。もし自社でリファラル採用の制度を作りたいなら、どのような対価があるのかを明確にする必要があります。

この記事では、採用の仕組みづくりに必要な情報として、リファラル採用の報酬やその設定方法などを解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

リファラル採用のインセンティブは10万円程度が相場

1人のリファラル採用につき、紹介者に支払う報酬を調査した結果を見てみましょう。

参考:「最近、注目の「リファラル採用」、企業の導入率はなんと約6割!効果的な運用のための対策とは?」

グラフでは「5万円未満」が26.0%と最も多く、次いで「5~10万円未満」が19.2%となり、10万円未満のインセンティブを支払っている企業が全体の約半分を占めています。

他にも、割合は少ないながらも「50万円以上」の報酬を支払う企業や、「報酬なし」の企業もあるようです。

リファラル採用を推進するためには、社員の協力は必要不可欠です。採用活動を活発化させるためにも、社員のモチベーションを上げる点でインセンティブの設定は有効と言えます。

設定する際は、10万円程度を目安にすると良さそうです。

リファラル採用の報酬設定で注意すべき職業安定法について

リファラル採用をする上で、報酬の支払い制度に不備があると、「職業安定法」において違法性を問われてしまう可能性があります

職業安定法では、第30条に「有料の職業紹介事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。」と定められています。

リファラル採用のインセンティブは、「企業に人材を紹介して得た報酬」となるため、職業紹介事業者としての許可を受ける必要があります。

許可がないままリファラル採用をした場合、紹介者および紹介者にインセンティブを支払った企業も違法性を問われる可能性があるのです。

ただし、紹介者へのインセンティブ禁止を明記する第40条には、例外として、「ただし、賃金・給料またはこれらに準じるものを支払う場合、または報酬の額について事前に厚生労働大臣の認可を得ている場合を除く。」とあります。

すなわち、報酬を給料として支払うことは例外として認められているのです。インセンティブは賃金の形で支給していれば、厚生労働大臣に認可を得なくても違法性はありません。

なお、職業安定法の第40条に違反した場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されますので、注意が必要です。

紹介報酬の設定方法

リファラル採用の報酬は、具体的な行動や成果に対していくら支払うのかを定める必要があります。
制度を作るときには、社員とのコミュニケーションを意識しながら、柔軟な設計をしましょう

支給の目的は「紹介活動における負担金の補償」なのか、「会社に貢献してくれたことへの感謝」なのか、リファラル採用をする理由や背景によってもさまざまです。

どのような活動をインセンティブの支払い対象とするのか、明確な基準を作りましょう。

(インセンティブの設計事例)

  • 紹介や内定後フォローにおける会食費を上限〇〇円まで支給する
  • 応募や面談に繋がったら〇〇円のインセンティブを支給する
  • 入社後〇ヶ月間は、毎月〇〇円のインセンティブを支給する
  • 年間で応募者を最も多く獲得した社員にインセンティブ〇〇円を支給する
  • 営業の場合は〇〇円、エンジニアの場合は〇〇円を支給する
  • リファラル採用で入社した方にはお祝い金〇〇円を支給する

金額については、会食費の支給であればおおむね5万円以内に収まり、実際に入社して活躍したならより多くの報酬が妥当と言えるでしょう。

支払うタイミングもさまざまな選択肢があり、「応募後」「面談後」といった採用の過程や、「内定後」「入社後」など決定後のタイミングなどが挙げられます。

早期退職による損をしないためには、「入社◯ヶ月」のように報酬のタイミングを定着後にするのも一つの手です。

インセンティブ設定においては、採用課題に応じた制度作りもできます。たとえば、「〇〇の技術を持ったエンジニアの紹介は、採用単価や優先度から最も高い報酬」「応募数を増やしたいので、応募決定でインセンティブ支給」「離職率を下げたいので、入社から一定期間の経過後にインセンティブ支給」などが一例です。

また、報酬は入社した方に用意するパターンもあります。社内でリファラル採用制度を話題にしやすい状況を作れるため、制度の浸透や、社員の意欲アップにも繋がる方法です。

リファラル採用は報酬を設定するだけでは上手くいかない

では、報酬(インセンティブ)の制度作りができたらリファラル採用は上手くいくのでしょうか。
実は、そうとは言えません。

リファラル採用においては、ただ対価を示すだけではなく、そのような仕組みがある意義を伝え、社員と適切な関係構築をすることが必要なのです。

紹介とは、本来デリケートなもの。自分が本当に良いと思うものでなければ、特に知り合いや友人には積極的におすすめできません。

大切なのは、社員に知人を紹介したいと感じてもらえるようなマインド形成や、組織の環境づくりです。

人事の力量が求められる部分ではありますが、成功すれば組織の活性化にも繋がるため、以下のポイントを押さえて取り組んでみましょう。

社員に制度を理解してもらう必要がある

まずは、社員に制度を知ってもらい、理解を深めてもらうための活動が必須です。人事から上手く働きかけて、社員とのコミュニケーションを図りましょう。

「なぜリファラル採用を導入したいのか」という理由や導入を決めた背景を説明するとともに、「採用について現場の知恵を貸してほしい」と訴求すれば、人事目線での一方的な告知ではなく、社員を信頼した上での提言であることが伝わります。

初めの段階から社員を巻き込み、参加型のスタンスを作っていくことが重要なのです。

さらに制度の活用を広めるためには、各部署からメンバーを募り、リファラル採用をプロジェクト化するのも効果的な手法です。

候補者の転職のきっかけ、動機を理解する

候補者が現れたら、転職のきっかけや動機を理解することがポイントです

「なぜ転職しようと思ったのか」「なぜ紹介を受けて応募しようと決めたのか」、その理由を深掘りしていくと、転職希望者のニーズや自社の魅力と言える部分が見えてきます。

その魅力を最大化することは企業の価値にも繋がり、既存社員の定着や、新たなメンバーの参画にも繋がるものです。

紹介から応募に繋げるには、紹介者自身がいきいきと働き、職場に対する好感を持っていることが決め手になることもあります。

リファラル採用を導入するからには、企業と社員の相互理解に基づく「信頼づくり」、社員が自社を知人に紹介したいと思えるような「会社づくり」、この2つに取り組むことが大切です。

カジュアルな面談、会食から実施する

いきなり選考への参加を促すのではなく、カジュアルな面談や会食からスタートすることもコツの一つです

すぐに応募しなくても良い安心感が生まれ、強引な勧誘という悪い印象がつくことも避けられます。

まずはカジュアル面談や会食で接点を作るためにも、インセンティブの条件を「カジュアル面談の設定」「候補者1名との会食の実施」にするのも良い方法です。

ラフな対面でのやり取りを通して会社を知ることで、候補者は実際に自分が応募したいかどうかを判断できます。

ただし、リファラル採用では「紹介されたからには、相手の顔を立てるためにも選考を受けなければ」と候補者が思ってしまうケースもあるため、注意を払いましょう。カジュアル面談や会食からのスタートであれば、選考や入社におけるミスマッチの軽減にも繋がります。

不採用時や、退職時のフォローも重要

リファラル採用の制度を使ったとしても、選考で必ずしも合格を出せるとは限りません。また、せっかくリファラル採用を通して入社した人材も、何らかの理由で退職してしまう可能性はあります。

応募の起点は紹介だったとしても、選考では他のルートからの応募者と同じ条件下で判断されます。

不採用になる可能性も0ではないため、社員には「紹介者を必ず採用するとは限らない」と伝えておけば、紹介時に「絶対にうちで働ける」と伝えられ、情報の齟齬が起きる危険性も回避できるでしょう。

また、不採用や退職になったことで紹介者が気を悪くすることがないように、人事からの積極的なケアも必要です

そのためにも、報酬の発生ポイントを選考の過程や内定後すぐに定めることは、応募者を獲得したことへの直接的な評価として受け取られます。

制度を活用し、協力してくれた社員にまずは感謝を伝え、次の採用の成功に繋げましょう。

まとめ:リファラル報酬における報酬の意義を理解して、効率的に人材を採用しよう

リファラル採用の報酬(インセンティブ)は、社員と信頼を築くための制度であり、報酬の条件を定めることで採用課題の解決にも繋がるものです
相場が10万円ということを踏まえれば、少ないコストでマッチング度の高い人材を効率良く採用できるメリットもあります。

また、リファラル採用を成功させるためには、社員が知り合いや友人を紹介したくなる会社づくりが必要です。
離職率の低下や組織の活性化も期待できるでしょう。

報酬の金額や条件は、会社それぞれに合わせて自由に設計できることも特徴です。
自社の風土に合った制度をつくり、採用を成功させましょう。